トランプ氏の「核の塵」発言に専門家が懸念表明、イラン濃縮ウラン巡る用語の誤解が外交に影響か
ドナルド・トランプ米大統領は先日、イランが核兵器を保有せず、「核の塵(ちり)」を引き渡すことに合意したと主張しました。この「核の塵」という聞き慣れない表現は、大統領がイランが保有する高濃縮ウランの備蓄を指して用いた言葉です。
しかし、この「核の塵」という言葉は、原子力産業や核不拡散の分野で一般的に使われる専門用語ではありません。この発言を巡り、核問題の専門家たちの間では、トランプ氏や中東担当特使のウィトコフ氏が、核物質に関する技術的な内容をどの程度正確に理解しているのかについて、深刻な疑念が浮上しています。
核兵器開発につながる可能性のある高濃縮ウランの正確な理解は、国際的な安全保障にとって極めて重要です。不正確な言葉遣いは、外交交渉の混乱を招き、国際社会の誤解を生む恐れがあるため、専門家らはその影響を懸念しています。
「核の塵」とは何か:専門家が指摘する技術的誤解
トランプ氏が使用した「核の塵」という表現は、核物理学や原子力工学の分野では存在しない言葉です。通常、核燃料サイクルにおいてウランを濃縮する過程で生成される物質は、濃縮ウラン、劣化ウラン、または使用済み核燃料などと明確に分類されます。これらの物質は、その組成や放射能レベル、用途に応じて厳密に管理され、それぞれ異なる国際的な規制が適用されます。
専門家たちは、この言葉が、高濃縮ウランが持つ危険性や、その国際的な管理の複雑さを正確に反映していないと指摘しています。高濃縮ウランは、核兵器の製造に直接転用可能な物質であり、その備蓄量は国際原子力機関(IAEA)の厳重な監視下に置かれています。したがって、この物質を「塵」という日常的な言葉で表現することは、その戦略的な重要性や潜在的な脅威を過小評価する危険性をはらんでいます。
濃縮ウランの重要性とその用途
濃縮ウランは、原子力の平和利用と軍事利用の両方において極めて重要な物質です。ウラン鉱石から採掘される天然ウランは、核分裂性のウラン235がわずか0.7%しか含まれておらず、そのままでは核反応を維持できません。これを核燃料として利用するためには、ウラン235の濃度を高める「濃縮」というプロセスが必要となります。原子力発電所で使用される低濃縮ウランは、ウラン235の濃度が3〜5%程度ですが、核兵器に使用される高濃縮ウランは、濃度が20%以上、場合によっては90%以上に達します。イランの核開発プログラムにおける濃縮ウランの備蓄は、その濃度レベルが国際社会の監視対象となっており、核拡散防止条約(NPT)体制下での重要な焦点の一つです。この物質の管理と削減は、イラン核合意(JCPOA)の核心部分を成すものであり、その理解の正確性は外交交渉の成否に直結します。
専門家の懸念と外交への影響
核問題の専門家たちは、大統領レベルの要人が核関連の専門用語を誤って使用することに対し、深い懸念を表明しています。このような不正確な表現は、核不拡散体制の複雑さを軽視していると受け取られかねません。特に、イランのような核開発を巡るデリケートな交渉相手に対しては、言葉の選択一つが相手国の信頼を損ねたり、誤解を生んだりする原因となり得ます。
ウィトコフ中東担当特使の発言も

