SpaceXは主力ロケットFalcon 9の相乗り商業打ち上げ枠の新規予約を2028年末で締め切り、大型宇宙船Starshipへの移行準備を本格化させています。米航空宇宙局(NASA)は国際宇宙ステーション(ISS)への人員輸送を維持するため、2026年9月18日にSpaceXと9億4600万ドルの固定価格契約変更を結び、宇宙船Crew Dragonによる3回の追加飛行枠を確保しました。
フランスのパリで2026年9月14日に開幕した国際会議「World Space Business Week」では、Falcon 9の商業枠停止に伴う世界的な打ち上げ手段の不足が主要な議題となりました。Portal Space SystemsのJeff Thornburg最高経営責任者(CEO)は「今週は誰もが打ち上げ機へのアクセスについて話しているようだ」と述べ、衛星運用事業者の間で代替機確保の競争が急速に激化している実態を指摘しました。
NASAがCrew Dragonの3ミッションに9億4600万ドルを配分
NASAが発注した契約変更は、商業乗員輸送能力(CCtCap)プログラムに基づく「Crew-15」「Crew-16」「Crew-17」の3ミッションを対象としています。各飛行の準備完了時期は2027年と2028年に設定され、契約の履行期限はISSの運用終了が見込まれる2030年12月31日までに設定されています。これにより、SpaceXがNASAと結んだCCtCapプログラムの累計契約総額は、計17ミッションで59億2000万ドルに達しました。
米国において現在、軌道上の有人宇宙ステーションへ人員を安全に輸送できる認証済み宇宙船はCrew Dragonのみとなっています。ボーイングが開発を進める宇宙船Starlinerは、2024年に実施された有人テスト飛行でスラスターの不具合やヘリウム漏れなどの重大事案を起こして以降、本格的な運用に必要な認証を依然として取得できていません。そのためNASAにとって、Falcon 9とCrew Dragonの稼働継続はISS運用継続の生命線となっています。
Falcon 9の商用枠制限とSpaceXの契約データ
SpaceXは2026年7月中旬から、Falcon 9による相乗りミッション「Transporter」および「Bandwagon」の新規枠受け付けを段階的に制限し、2028年末までのスケジュール枠を埋めました。同社の宇宙輸送サービスに関する確定データは以下の通りです。
- 追加契約額:9億4600万ドル(NASAのCrew-15、16、17の計3ミッション)
- CCtCap累計契約額:59億2000万ドル(SpaceXが受託した計17ミッションの合計)
- 相乗り打ち上げ費用:1キログラムあたり約7,000ドル(商業用rideshareの標準価格)
- 履行完了期日:2030年12月31日(NASA契約の最終期限およびISS運用目標期限)
Starship完全移行を目指すGwynne Shotwell社長の基本方針
SpaceXの社長兼最高執行責任者(COO)を務めるGwynne Shotwell氏は、次世代完全再使用型ロケットStarshipが実用化されれば「StarshipがFalcon 9とDragonカプセルを過去のものにする」と明言しています。Elon Musk最高経営責任者(CEO)が主導する同社は、打ち上げ能力と輸送効率を飛躍的に向上させるため、将来的に全ての運用をStarshipへ一本化する方針を一貫して掲げています。
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Shotwell氏は2024年11月の金融カンファレンスにおいて、Falcon 9およびDragonについてStarshipへの完全移行まで6年から8年程度は運用を継続する見通しを示した上で、「確実に言えるのは、今すぐに退役させるわけではないということだ」と語っていました。しかし、2028年以降の商業向け相乗り受付停止が公になったことで、民間市場向けの打ち上げサービスは想定よりも早い段階で縮小に向かうとの見方が業界内で広がっています。
打ち上げ機不足が直面する今後の不確定要素
民間衛星を運用する各社にとって、1キログラムあたり約7,000ドルという低水準の価格で高い成功率を誇るFalcon 9の相乗り枠が制限される影響は大きく、他社ロケットへの需要集中により打ち上げコスト全体の上昇が懸念されています。宇宙業界内では代替ロケットの選定と確保が喫緊の課題となっています。
現時点でSpaceXは、Falcon 9やCrew Dragonの商用最終飛行に関する確定した期日を正式には発表していません。民間枠の受付停止が進む一方、NASAとの政府ミッション契約は2030年12月31日まで継続することが確定しており、官民の需要が交錯する中で今後のStarship開発進捗と退役手順の調整が焦点となります。
