ギリシャ西方のイオニア海で約20時間にわたり漂流していた44歳のエルサルバドル人女性が10日(土)、意識のある状態で無事に救助された。この乗客は、クルーズ運航会社Royal Caribbeanが所有するバハマ船籍の大型客船Odyssey of the Seasで航海中、ギリシャのザキントス島から南西沖へ出た海域で自ら海へと飛び込んでいた。
ギリシャ沿岸警備隊の報道官によると、保護された女性は救助隊員に対し「下船したかった」ため海に入ったと説明している。総トン数(船内の全容積を示す指標)16万7704トン、全長347メートルで乗客定員約4200人を誇る同船は当時、ギリシャのミコノス島を出発し、イタリアのナポリへ向かう航路を辿っていた。
通報を受けた捜索救助活動には、ギリシャ沿岸警備隊の艇2隻、ギリシャ空軍および海軍のSuper Pumaヘリコプター1機、Odyssey of the Seas本船、そして周辺海域を航行していた複数の商船が動員された。ギリシャのピレウスからイタリアのジョイア・タウロへ向かっていたマデイラ船籍のコンテナ船MSC Rossella III(3万8771載貨重量トン、2700TEU)が、暗闇の中でオレンジ色の救命浮環に取り付けられた点滅灯を視認し、浮環につかまっていた生存者の特定に至った。沿岸警備隊の報道官は「彼女は20時間海上にいた」と述べている。
女性は沿岸警備隊の巡視・救助艇によって海中から引き揚げられ、船内で応急処置を受けた後、ペロポネソス半島のカタコロ港へと搬送された。港からは救急車で近隣のピルゴス市内にある病院へ移送され、軽度の低体温症と診断された。
搬送先の医療機関では、身体的な精密検査に加え、地元検察官の命令による精神鑑定が実施された。一方、Odyssey of the Seasの船長は船内放送を通じて乗客に救助の知らせを伝え、「まず最初に、皆様に素晴らしい知らせをお伝えしたいと思います。午前2時30分、海に転落した方が発見されたとの連絡を受けました。彼女は病院へ搬送され、自力で歩いて船を降りたとの報告が入っています」と語った。
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ザキントス島沖での転落から救出までの経過
- 2026年10月4日:クルーズ船Odyssey of the Seasが1週間の周遊日程でイタリアのチヴィタヴェッキア港を出港。
- 2026年10月9日午前6時00分(現地時間):ザキントス島の南西約72海里(約133キロメートル)のイオニア海上で、乗客の女性が海へ飛び込む。船は午前10時から11時頃に針路を反転させ、現場海域での旋回捜索を開始。
- 2026年10月10日午前2時30分(現地時間):ザキントス島の南西約70海里(落下地点から約2海里)の海上で、貨物船MSC Rossella IIIが意識のある女性を発見し、沿岸警備隊が救助。
- 2026年10月12日(月):ギリシャ沿岸警備隊が女性の国籍、年齢、および本人が語った動機を公式に確認。
カタコロ港湾局の調査とクルーズ船からの転落データ
運航親会社であるRoyal Caribbean Groupは公式声明を発表し、転落が確認された直後に緊急プロトコルを発動したと明らかにした。同社は「ただちに捜索救助活動を開始し、関係当局と緊密に連携しています」とした上で、「当社のケアチームは、この困難な時期にある乗客の家族に対して積極的な支援とサポートを提供しています。ご本人とご家族のプライバシーを保護するため、これ以上の詳細をお伝えすることはできません」と付け加えた。
クルーズ船の国際業界団体であるCruise Lines International Association(CLIA)のためにコンサルティング会社G.P. Wildがまとめた調査報告書によると、2009年から2019年までの間に世界のクルーズ船で発生した乗客および乗員の海上転落事故は212件記録されており、そのうち生きて救出されたのはわずか48人にとどまる。対象期間中、業界全体の輸送定員が68%拡大した一方で、転落事故の発生率は約35%減少した。
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2025年には、プエルトリコのサンフアン港近くを航行していたRoyal Caribbeanの別の客船でも同様の事案が発生している。この時は乗客のJey Gonzalez-Diazが、船内で抱えた1万6000米ドルを超えるギャンブルの負債の支払いや米国税関・国境警備局による検査を免れようとして海に飛び込んだ疑いが持たれた。
ギリシャ当局および運航会社は、今回救助されたエルサルバドル人女性の氏名を公表していない。イオニア海での捜索活動に長時間を費やした結果、Odyssey of the Seasは予定していたナポリへの寄港を中止し、現在はカタコロ港湾局が事案の詳しい状況を解明するための公式調査を進めている。
