日本の厚生労働省は、顧客による悪質クレームから従業員を守るカスタマーハラスメント対策の義務化や、全国加重平均で過去最高となる時給1,177円への最低賃金改定を含む労働・社会保障関連の制度改革を2026年10月1日に施行しました。この改定により、前年度の時給1,121円から56円の引き上げが実施され、パートタイム労働者に対する社会保険の加入基準や育児期の年金免除制度など複数の見直しが一斉に適用されます。
厚生労働省は2026年9月29日に令和8年度10月の主要な制度変更概要を公表しており、全事業主を対象とした雇用管理上の措置義務や、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた各種ガイドラインの適用を開始しました。
最低賃金1177円への改定と47都道府県の引き上げ幅
地域別最低賃金は、各都道府県において時給54円から65円の範囲で順次引き上げが行われます。全国で最も高い水準となったのは東京都の1,280円で、最も低い水準となったのは宮崎県の1,085円です。全国の加重平均額は1,177円に達し、地方自治体ごとに異なる改定スケジュールに沿って改定手続きが進められます。
令和8年度の改定作業においては、全都道府県の最低賃金が時給1,016円を超えたことが大きな節目となりました。全国すべての地域で時給1,016円以上が達成された結果、週20時間勤務する労働者の月収が試算上必ず旧基準を上回る構造が整い、賃金水準の底上げに伴う制度調整が連動して実施されることになりました。
短時間労働者の社会保険適用と月額8万8000円要件の撤廃
短時間労働者が厚生年金や健康保険などの被用者保険へ加入する際に適用されていた月額8万8000円(年収換算で約106万円)の賃金要件が正式に撤廃されました。最低賃金が全国で時給1,016円以上となったことで、週20時間以上勤務する労働者は自動的に月額8万8000円の賃金基準を満たすため、この要件を維持する必要性がなくなったことによる措置です。これにより、週所定労働時間が20時間以上である基準を満たす短時間労働者の社会保険加入が一段と進むことになります。
最低賃金法の減額特例許可を受けている対象者で月額賃金が8万8000円未満となる場合には、被用者保険の対象外となる原則を維持しつつも、労働者本人の希望があれば事業主の同意なしに任意加入できる仕組みが設けられました。また、令和7年(2025年)の年金制度改正によって新たに被用者保険の適用事業所となった比較的小規模な企業で働く短時間労働者に対しては、手取り収入の急激な減少を緩和するための保険料調整措置が経過措置として導入されています。
雇用管理で何が義務付けられるのか?
すべての事業主に対し、顧客等からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメント(カスハラ)および求職者に対するセクシュアルハラスメントを防止するための雇用管理上の措置が法律上義務付けられました。企業は従業員が理不尽な要求や悪質な嫌がらせに晒されないよう、相談窓口の設置や対応マニュアルの整備などの体制を構築しなければなりません。
あわせて「同一労働同一賃金ガイドライン」が改定され、賞与、退職手当、家族手当、住宅手当、無事故手当、病気休職、福利厚生施設の利用、夏季冬季休暇、褒賞に関する具体的な判断基準が追加されました。事業主は雇入れ時や労働者派遣の契約締結時に、通常労働者との待遇の相違内容やその理由について労働者が説明を求めることができる権利を書面等で明示する必要があります。
2026年10月施行の主要改定データ
- 施行日:2026年10月1日(木曜日)
- 実施地域:日本全国(47都道府県)
- 最低賃金全国加重平均:時給1,177円(前年比56円増)
- 最高額および最低額:東京都1,280円、宮崎県1,085円
- 撤廃された基準:被用者保険適用の月額8万8000円要件
- 生活扶助特例加算額:世帯員1人あたり月額2,500円(1,000円増額)
国民年金の育児免除と生活扶助の変更点
国民年金第1号被保険者である20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、農業者、学生、無職の人が、1歳未満の子と同居して養育する場合、国民年金保険料の納付が全額免除される育児期間免除制度が導入されました。この制度により免除された期間は保険料を納付したものとみなされ、将来受給する老齢基礎年金の給付額に全額反映される仕組みとなっています。
生活保護受給世帯を対象とした生活扶助基準では、物価や消費実態に対応するための特例加算が見直されました。世帯人員1人あたりの特例加算額は従来の月額1,500円から1,000円引き上げられて月額2,500円となり、2026年10月から1年間の期限付きで支給されます。加算を行ってもなお従来の支給額を下回る世帯に対しては、従前の基準額が保障されます。
地域別最低賃金の引き上げは10月1日から各地方で段階的に発効しており、2026年12月2日(水曜日)までに全国47都道府県のすべてで改定作業の適用が完了する日程となっています。
