英国の故ダイアナ妃(ウェールズ公妃ダイアナ)が生前に頻繁に足を運んでいたロンドン南西部リッチモンドの歴史的邸宅「Ormeley Lodge」が、高級不動産市場で売りに出されている。希望売却価格は2500万ポンドで、米ドル換算で約3350万ドル、ブラジルレアル換算では約1億7400万レアルに相当する。
英国における同物件の販売は、不動産仲介大手のKnight FrankとUK Sotheby‘s International Realtyが共同で担当しており、ブラジル国内では提携先のBossa Nova Sotheby’s International Realtyが窓口となっている。この邸宅は英国の社交界の名士で作家の故Lady Annabel Goldsmithと、その2番目の夫で実業家・政治家の故Sir James Goldsmithが50年間にわたり所有していたもので、所有者が91歳で死去したことを受けて市場に出された。夫妻の末息子で実業家・環境保護活動家のBen Goldsmith氏は「Ormeleyは私たちの人生すべてにおいて大切な我が家でした。しかし今、別の幸運な家族へと引き継ぐべき時が来ました」と声明で述べている。
18世紀の建築美を残す邸宅の内部構造と広大な敷地の仕様
リッチモンド公園(Richmond Park)とハム・コモン(Ham Common)の間に位置するこの邸宅は、1980年代に英国の室内装飾事務所Colefax & Fowlerによって内装が手がけられた。館内には当時の暖炉や精巧な天井のモールディング(装飾くり形)、上げ下げ窓といった伝統的な建築要素がそのまま保存されている。1階部分には正面階段を備えたエントランスホール、複数のリビングルーム、図書室、ダイニングルーム、パントリー付きのキッチン、朝食室、スタッフ用控室、ワインセラー、収納スペースが配置されている。上階には専用書斎付きの主寝室やウォークインクローゼットを備えた第2スイートのほか複数の寝室があり、敷地内にはゲストやスタッフ用のコテージおよび専用リビング付きの独立したアパートメントも併設されている。
周囲を壁に囲まれた屋外エリアには、ロンドンの保護緑地に隣接する立地を生かしたレジャー施設や菜園が整えられている。Ben Goldsmith氏は「1976年に母がOrmeley Lodgeにやって来た瞬間から、彼女にとっての最大の魅力はそのロケーションにありました」と振り返っている。
敷地および建物の具体的な規模と設備仕様は以下の通りとなっている。
- 延床面積:約1万5814平方フィート(約1469平方メートル)。
- 主要ルーム構成:10ベッドルーム、7バスルーム。
- 主要居室の平均天井高:3.3メートル(11フィート)以上。
- 壁に囲まれたプライベートガーデンの面積:約2.3エーカー(9300平方メートル以上)。
- レジャーおよび栽培施設:パビリオン付きの南向き温水プール、テニスコート、鳥小屋、果樹園、菜園、宿根草の花壇、野草エリア。
- ロンドン中心部からの距離:ハイド・パーク・コーナー(Hyde Park Corner)まで約16キロメートル(10マイル)。
- 周辺環境:約2500エーカー(1000ヘクタール以上)の保護緑地であるリッチモンド公園に隣接。
英国王室の重要な場面と数々の著名人を迎えた社交の歴史
1990年代を通じて、Lady Annabel Goldsmithの親友であったダイアナ妃は同邸宅で開かれる日曜日の昼食会に頻繁に出席し、幼少期のウィリアム王子とヘンリー王子を連れてプールやテニスコートを利用していた。さらに遡る1989年には、屋敷の女主人であるLady Annabelが主催したカミラ・パーカー・ボウルズ(現英国王妃カミラ)の妹アナベル・エリオットの40歳の誕生日パーティーにおいて、ダイアナ妃が当時のチャールズ皇太子との不倫関係をめぐってカミラ夫人に直接詰め寄った場所としても英国王室史に記録されている。
ロンドンの著名な会員制ナイトクラブ「Annabel’s」の名前の由来となったことでも知られるLady Annabel(最初の夫であるMark Birleyが彼女にちなんで命名)は、この邸宅で暮らした50年間にわたり各界の著名人をもてなした。娘のJemima Goldsmithと交際していた俳優のヒュー・グラントや、Jemimaの元夫でパキスタン元首相のイムラン・カーン、ジャーナリストのデビッド・フロスト、ケント公アレクサンドラ王女らがゲストとして訪れている。また、Goldsmith家が取得する以前には、英国議会議員のSir John Sinclairや、エリザベス2世女王の王室主馬頭(王室の儀式職であるMaster of the Horse)を務めたDavid Faneが居住していた。
文化財指定による改修制限と高級不動産市場における資産価値
スチュアート朝末期(1603〜1714年)からジョージアン時代初期への移行期にあたる18世紀初頭に建設されたOrmeley Lodgeは、英国の歴史的建造物(Grade II*)に公式指定されており、ハム・コモンの自然保護区域内に位置するため、建物の改修には法的な制限と特別な許可が必要となる。Bossa Nova Sotheby’s International Realtyの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるMarcello Romero氏は、歴史的物件には構造変更に関する独自の規則が伴うと説明する。同氏は「多くの場合、こうした物件でも設備の近代化は可能ですが、特定の建築的特徴を保存する契約上の義務や、現地の法規制が課されることがあります」と指摘した。
Romero氏は建築保護規制の具体例として、過去の取引事例を挙げた。「一例として、私たちがフランスで売却した城には外観に関する非常に具体的な制限があり、ファサードの変更が一切禁じられていました。そのケースでは自治体の管理方針や法律上の問題が関わっていました」と述べている。
18世紀の建設から現在の売却に至るまでの主な経緯は以下の通りである。
- 18世紀初頭(1715年頃):邸宅の建設時期。
- 1763年〜1767年:英国の元財務大臣チャールズ・タウンゼンド(Charles Townshend)が居住。
- 1950年1月10日:英国の歴史的建造物リストに公式登録。
- 1976年:Lady Annabel GoldsmithとSir James Goldsmithが物件を取得。
- 2025年10月18日:Lady Annabel Goldsmithが死去し、遺族による売却決断の契機となる。
- 2026年7月3日:英国の不動産市場に2500万ポンドで売り出し開始。
- 2026年8月12日:ブラジル市場向けに1億7400万レアルの換算価格で物件情報を公開。
- 10月15日(木):米ドル換算3350万ドルの価格で国際的な注目を集める。
超高級不動産セクターにおいて、歴史上の著名人と関わりのある物件は、その希少性から「トロフィー・アセット(象徴的資産)」として分類される。Marcello Romero氏は「この種の物件はより多くの好奇心や特別な興奮を呼び起こします。著名人が関わった不動産が売りに出されると、さらなる関心を集める呼び水となります」と語っている。同様の国際的な高級不動産市場では、米ロサンゼルスで女優のアンジェリーナ・ジョリーがかつて暮らした邸宅も3000万ドル(約1億5500万レアル)で売りに出されている。
