ヘグセス米国防長官がテキサス州のフォートフッド軍基地で起きた乱射事件のニダル・ハサン死刑囚について、銃殺刑の執行をインターネットで生中継する方針を示したことに対し、米連邦議会の与野党議員や宗教指導者から激しい反発が起きています。ハサン死刑囚の刑執行は2026年12月3日午後1時(現地時間)に予定されており、国防総省が処刑の模様を公に配信する構想を明らかにしたことを受け、民主党だけでなく長官と同じ共和党の議員からも独裁体制やテロ組織の手法に近いとの批判が相次ぎました。
ヘグセス国防長官は10月7日水曜日、米海軍の空母エイブラハム・リンカーン艦上で行われた取材に対し、重大な犯罪には厳しい結果が伴うことを人々に周知させるため、一般市民が視聴できるように公開処刑を確実に中継すると語りました。国防総省も10月8日木曜日にこの配信方針を公に認めましたが、軍の死刑執行を一般にネット中継する具体的な通信基盤や技術的手段、法的な課題をどのようにクリアするかについての詳細な運用手順は明らかにしていません。
ハサン死刑囚の銃殺刑計画に対する連邦議会と政権内の反応
共和党のトム・ティリス上院議員は、公開処刑はイランやアフガニスタンのような抑圧的な独裁国家が行うものであり米国で行われるべきではないと表明しました。同じく共和党のオースティン・スコット下院議員も、死刑判決そのものには完全に賛成するとした上で、処刑をライブ配信することは過激派組織の手法であり米国はそのような国ではないと強く警告しました。さらに共和党のジョン・カーティス上院議員は、古代ローマの血なまぐさい見せ物が人々を堕落させたとセネカが警告した故事を挙げ、処刑を娯楽として消費する風潮を育てれば文明は衰退すると指摘しました。民主党のクリス・Murphy上院議員もこの計画を中世的でおぞましいと非難し、過激派組織の処刑映像を模倣しているのではないかと疑問を投げかけています。
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政権内部からも慎重な姿勢が示されています。JDバンス副大統領は10月9日金曜日、記者団に対して実際に配信が実現するかどうかは分からないと懐疑的な見解を示し、仮に配信されたとしても自分自身はその映像を見るつもりはないと明言しました。ドナルド・トランプ大統領は同日夕、ホワイトハウス前で記者団から配信の承認について問われた際、最終的な対応は政権として判断すると述べる一方で、自ら承認したかとの問いには同意を示唆するなど発言に揺れを見せています。米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長はテレビ放送の可能性を否定しつつ、今後の配信対応については国防長官の判断に委ねられるとの見方を示しました。
1936年以来となる公開処刑と米軍における銃殺刑の経緯
米国において公衆の面前で処刑が行われた最後の事例は、1936年にケンタッキー州で執行されたレイニー・ベシア死刑囚の絞首刑とされています。今回の計画が実行されれば約90年ぶりの公開処刑となるほか、米陸軍による兵士の銃殺刑執行は第二次世界大戦以来であり、米軍全体における軍関係者の死刑執行としても65年ぶりとなります。元陸軍少佐で精神科医だったハサン死刑囚は、2009年11月5日にフォートフッド基地の施設内で銃を乱射し、兵士ら13人を殺害、32人を負傷させた罪で軍法会議により死刑を言い渡されていました。
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全米における死刑制度の運用面でも、銃殺刑は極めて異例な手段です。死刑情報センターの記録によると、1977年以降に全米で実施された銃殺刑はわずか6件にとどまり、現在この執行方法を法的に認めている州も5州に限られています。近年は薬物注射用の薬剤調達難や執行の失敗が相次いだことで代替手段として銃殺が見直される動きもある一方、暴力性が直接的であることから採用には慎重な議論が続いています。コーネル大学ロースクール死刑研究プロジェクトのシェリ・リン・ジョンソン副責任者は、人の死を暴力的な形で公に誇示することは人命を奪う行為に対する人々の感覚を麻痺させ、処刑される人間の尊厳をさらに傷つけると指摘しました。全米カトリック司教協議会のポール・コークリー会長も、公開処刑は社会の道徳的基盤を損なう野蛮な行為だと非難しています。
国連人権高等弁務官事務所は、死刑の生配信は公開処刑に該当し、国際法が絶対的に禁止する品位を傷つける刑罰や拷問に当たると警告を発しました。国防総省のショーン・パーネル報道官は執行を担当する兵士の選定方法や中継技術について詳細が確定次第発表するとしており、2026年12月3日に向けた法的判断や運用の是非が今後の焦点となります。
